第1 働き方改革関連法についての取組
- 労働時間の上限規制
時間外労働は原則として月間45時間、年間360時間とされた。使用者に対しては、この原則の遵守を求めるとともに、安易な上限規制の例外を認めるような三六協定が締結されないように労働組合と連携していく。合わせて、使用者が、労働時間の把握義務を果たしているかチェックしていく取組を行う。 - 同一労働同一賃金
パートや有期労働者と同一企業内における正規労働者との不合理な待遇の相違は禁止された。また、派遣労働者についても同様の禁止規定が設けられた。不合理か否かは、各待遇の性質・目的に照らして判断されることから、今後は様々な待遇について積極的に不合理な格差であることを主張し、正規・非正規間の格差是正に向けた取組を行っていく。 - 高度プロフェショナル制度
高度プロフェショナル制度が職場で導入されないよう労働組合に働きかけを行っていくとともに、導入されている場合には有効要件を満たしているか否かチェックを行っていく。
第2 外国人労働者受け入れ(改正入管法)に対する取組
入管法改正が強行され、外国人の新たな在留資格(特定技能1号、2号)が設けられた。様々な問題が指摘されている技能実習制度について、何らの問題解決をしないまま、なし崩し的に外国人労働者を受け入れることは、人権が守られないままに外国人労働者が労働力を搾取されることにもなりかねない。外国人労働者の権利を守るためには、外国人が加入できる(加入しやすい)労働組合を広げていくことが効果的である。そこで、各種関係団体と連携して、外国人労働者の労働環境や状況に注視しつつ、外国人労働者の組織化・組織加入を進める活動を行う。
第3 更なる労働環境悪化を阻止するための取組
- 憲法改悪阻止
自民党改憲案(特に自衛隊明記)は、日本を戦争する国に歩ませる危険性を孕むものである。日本が戦争に巻き込まれれば、真っ先に犠牲となるのは自衛隊員のみならず、あらゆる労働者であり、その家族である。労働者の人権は、平和があってこそ守られる。そのためにも、日本が再び戦争することのないよう、自民党改憲案に反対する立場を堅持し、改悪阻止の活動をしていくことが必要である。 - 雇用によらない働き方拡大に対して
現在わが国では、ライドシェアや自営型テレワーク、プラットフォームビジネスなど様々な名称の「雇用によらない働き方」が検討されている。「雇用によらない働き方」は、労働関連法規の適用を回避して、使用者が雇用責任を負わずに、実質的には労働力を取引するものであり、使用者側のメリットを追及した仕組みである。これまでもわが国では、業務委託や請負などという名称で労働関連法規の適用を免れようとする事例が頻発していた。今後は、働く形態の名称によることなく、就労実態に応じて労働関連法規が適用されるべきであり、実質的に労働者であれば労働関連法規によって保護されるべきである。そのため、「雇用によらない働き方」政策の状況を注視しつつ、必要に応じて労働者保護の取り組みを行っていく。 - 裁量労働制
働き方改革関連法からは裁量労働制の改正は撤回されることになったものの、未だ政府は裁量労働制の対象拡大を諦めてはいない。改めて実態調査を行った上で、再び労基法を改正し、裁量労働制の対象拡大を行ってくる可能性が高い。そのため、今後も政府の動きを見ていく必要がある。 - 解雇の金銭解消制度
解雇の金銭解消制度については、現在「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」が開催されており、今後労働政策審議会での審議を経て、労働契約法改正を行ってくる可能性が高い。この点においても、政府の動向には注意が必要である。
第4 九州の労働者が直面している問題に対する取組
- 正規・非正規格差是正向けた取組(労契法20条)
- 最低賃金の大幅な引上げに向けた取組
- 女性労働者の権利擁護の取り組み
- ブラック企業・ブラックバイトを根絶する取組
- 労災、アスベスト、原発労働問題
第5 信頼される弁護団へ
- 労働者・労働組合の権利闘争への取組の強化
総会・夏季学習会において、弁護士からだけでなく、労働組合からの事例報告を充実させ、各地で労働者・労働組合の権利闘争に取り組む。労働委員会の活用を進めていく。 - 情報発信への取組
開設した九労弁のホームページを更に充実し、会員が利用しやすく、内容も充実したものに改善していく。 - 新入会員の拡大
労働事件に関心をもっている新入会員・若手会員が多い中、九労弁に加入する会員を増やすため、新入会員・若手会員が九労弁にアクセスしやすい環境を整える。 - 労働相談活動の充実
各地の常設ホットライン開設を更に進めるとともに、様々なホットラインに取り組んでいく。 - 各地弁護団の活動支援
労働弁護士の魅力を伝えると共に、各地での活動が更に活発かつ継続的になされるよう各地弁護団を経済面も含めて支援していく。
以上