意見表明

2020年 九州労働弁護団活動方針

2020年2月7日

第1 ハラスメント対策についての取組

2019年通常国会で、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」が成立し、セクハラ・マタハラに加えて、パワハラに関する規定が新設された。残念ながら、2019年12月公表された指針は衆議院・参議院で多数の附帯決議を反映していない上に、掲げることが不適切な具体例を挙げるなど内容に極めて問題が多い。そのため、指針が使用者の安易な弁解に利用されることのないようチェックしていくとともに、職場からあらゆるハラスメントが根絶されるよう法的手段も含めて取組を行っていく。

第2 教職員の給特法についての取組

教職員の長時間労働が社会問題となっているところ、昨年改正教職員給与特別措置法が成立し、教職員に1年単位の変形労働時間制の導入が可能となった。しかし、教職員は児童と異なり長期休みの間、暇な訳ではない。年間を通じて忙しいとされているにも関わらず、就業時間の延長を認めることは、さらなる長時間労働を招きかねないものである。そのため、教職員の労働実態についても注目しながら、教職員の労働環境改善に向けて取り組んでいく。

第3 均等均衡待遇への取組

4月からパート有期法、改正労働者派遣法が施行される。今後様々な待遇格差について積極的に不合理であることを主張し、正規・非正規間の格差是正に向けた取組を行っていくとともに、最高裁が示した労契法20条の判断枠組みが変更されるのか、今後の判例動向を注視していく必要がある。また、正社員との賃金格差是正を求める日本郵便に対する全国一斉訴訟に、九州でも福岡・長崎も参加するため、九州内で情報共有し、九州全体で支援していく。

第4 更なる労働環境悪化を阻止するための取組

  1. 憲法改悪阻止
    安倍首相は未だ憲法改正への意欲を失っていない。アメリカとイランは一触即発の状態で戦争への危機が生じている。にも関わらず、政府は中東への自衛隊派遣を強行しようとしている。現憲法下においてすら戦争に巻き込まれる危険があるにも関わらず、自民党改憲案(特に自衛隊明記)が通れば、ますます日本が戦争する国にむかって進んでいくこととなる。戦争の犠牲となるのは、まず労働者であることを意識し、改めて平和維持のため、自民党改憲案に反対する立場を堅持し、改悪阻止の活動をしていく。
  2. 雇用によらない働き方拡大に対して
    ウーバーイーツ利用が広まり、「雇用によらない働き方」拡大が検討されているところ、東京ではウーバーイーツ・ユニオンが結成されるなど、対抗する動きも出ている。安易に個人事業主扱いを拡大して、労働関連法規の保護対象を制限することは許されない。実質的に労働力を取引するものである以上、使用者は雇用責任を負うべきであり、実質的労働者は労働関連法規による保護が受けられねばならない。そのため、「雇用によらない働き方」政策の状況を注視しつつ、必要に応じて労働者保護の取り組みを行っていく。
  3. 解雇の金銭解消制度
    現在でも「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」では解雇の金銭解消制度導入に向けて議論がなされている。金銭解消制度導入がなされれば、近い将来使用者が金銭による雇用解消権を得ることになりかねず、阻止に向けて活動していくことが必要である。
  4. 副業兼業
    副業兼業を解禁するとしても、労働時間の上限規制や割増賃金の関係で、労働時間の通算方法や労災との関係など、問題は多く残されている。労働者が副業兼業を望む大きな理由は低賃金であり、安易な兼業副業解禁よりも本業の収入を増加させるべく、最低賃金の引き上げなどを求めていく。
  5. 外国人労働者問題
    入管法改正により設けられた外国人の新たな在留資格(特定技能1号、2号)の利用は低調である。依然として技能実習制度は維持されており、問題は解決されないままであることから、新たな在留資格での外国人労働者受け入れもその実態については注視していく必要がある。外国人労働者が労働者としての権利が守られる環境で稼働できるよう、労働組合など各種関係団体と連携して、外国人労働者からの相談についても積極的に関与していく。

第5 九州の労働者が直面している問題に対する取組

  1. 正規・非正規格差是正向けた取組(労契法20条)
  2. 最低賃金の大幅な引上げに向けた取組
  3. 女性労働者の権利擁護の取り組み
  4. ブラック企業・ブラックバイトを根絶する取組
  5. 労災、アスベスト、原発労働問題

第6 信頼に応えられる弁護団へ

  1. 労働者・労働組合の権利闘争への取組の強化
    総会・夏季学習会において、弁護士からだけでなく、労働組合からの事例報告を充実させ、情報共有・連携を促進し、労働者・労働組合の権利闘争に取り組む。
  2. 情報発信への取組
    九労弁のホームページの充実に向けて、内容を更に検討していく。
  3. 新入会員の拡大
    労働事件に関心をもっている新入会員・若手会員が多い中、九労弁に加入する会員を増やすため、新入会員・若手会員が九労弁にアクセス・加入しやすい環境を整える。
  4. 労働相談活動の充実
    各地の常設ホットライン開設を更に進めるとともに、様々なホットラインに取り組んでいく。
  5. 各地弁護団の活動支援
    労働弁護士の魅力を伝えると共に、各地での活動が更に活発かつ継続的になされるよう各地弁護団を経済面も含めて支援していく。

以上

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