意見表明

2022年 九州労働弁護団活動方針

2022年2月3日

第1 新型コロナに関わる労働事件への取組

2021年も前年から引き続いて新型コロナに大きな影響を受けた1年となった。今年も変異株の影響で、収束が見通せない状況が続いている。今後は休業に対する給付金等の支援制度の停止・削減に伴い、使用者の雇用削減に向けた動きが予想される。また、新型コロナ感染拡大を口実に、使用者が不必要に正規労働者を削減し、非正規労働者を増加させることも考えられる。そのため、新型コロナによる不利益を労働者だけに負わせることにならないよう取組を行っていく。

第2 均等均衡待遇への取組

第1とも関連するが、安易な非正規労働者の増加に歯止めを掛けるためには、労働契約法18条(無期転換ルール)の積極的利用と、正規労働者との労働条件の格差是正(均等均衡待遇)が必要である。パート有期法8条の適用も含め、正規・非正規労働者の格差是正に向けて取組を行っていく。

第3 ハラスメントに対する取組

2022年4月から全ての使用者に対して、パワハラ防止措置が義務化される。労働相談では「いじめ・嫌がらせ」の相談が多くを占める状況にあり、ハラスメント防止は重要な課題である。ハラスメントが問題となる場面は、就職活動や顧客からの苦情対応など広がってきており、職場からあらゆるハラスメントが無くなり、労働者が良好な職場環境で就労できるよう取組を行っていく。

第4 雇用によらない働き方に対する取組

コロナ禍でウーバーイーツ等の広がりに伴い、個人事業主として稼働する労働者が増えている。多くの個人事業主の場合、フリーランスも含め、圧倒的に交渉力・経済力の格差が存在する契約関係が存在しており、労働者の権利保護が弱い働き方の拡大には注意を要する。労働法制を潜脱する手段として、個人事業主が利用されることのないよう「雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会」の議論状況を注視し、必要に応じて法的手段など取り組んでいくことが必要である。

第5 更なる労働環境悪化を阻止するための取組

  1. 教職員の給特法についての取組
    教職員給与特別措置法改正の際、「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン」が「指針」となり、教職員の在校等事件の上限時間(月45時間、年間360時間)遵守が変形労働時間性導入の前提条件と明示された。これら制度を利用して教職員の労働実態を把握することが、教職員の長時間労働を防止する一歩となることから、労働組合による上記指針の積極的利用を支援していく。
  2. 高年齢雇用についての取組
    高年齢者については、引き続き継続雇用拒否や労働条件の引き下げ問題について争われている。コロナ禍において、非正規労働者の問題に注目が集まっているが、引き続き、高年齢者の著しい労働条件の不利益変更など定年後の労働条件や不当な更新拒絶がなされることのないよう、注視していく。
  3. 解雇の金銭解消制度
    「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」では、制度導入を前提としているかのような議論が続けられている。労働者は現状の法制度においても柔軟な解決を得ることが可能であり、解雇の金銭救済制度導入は労働者にとってメリットはない。解消金の上下限を設けるなどの議論もあり、事実上解雇無効時の解決金額を拘束するなど、むしろ悪影響を与える制度というべきである。引き続き、断固として制度導入に反対をしていく。

第6 九州の労働者が直面している問題に対する取組

  1. 正規・非正規格差是正向けた取組(有期パート法8条)
  2. 最低賃金の大幅な引上げに向けた取組
  3. 女性労働者の権利擁護の取り組み
  4. 職場でのハラスメントを根絶する取組
  5. 労災、アスベスト、原発労働問題

第7 信頼に応えられる弁護団へ

  1. 労働者・労働組合の権利闘争への取組の強化
    総会・夏季学習会において、弁護士及び労働組合からの事例報告を充実させ、双方向での議論を推進する。全体で、情報共有・連携を促進し、労働者・労働組合の権利闘争に取り組む。
  2. 情報発信への取組
    総会等でも引き続きリモート利用による参加者増加を目指すとともに、ML活用による会員間の情報共有を促進していく。
  3. 新入会員の拡大
    会員増加に向けて、新入会員・若手会員が労働事件に関心を持つきっかけとなるような取組を行い、九労弁にアクセス・加入しやすい環境を整える。
  4. 労働相談活動の充実
    各地のホットラインを利用し、積極的に労働者の相談に対応していく。
  5. 各地弁護団の活動支援
    労働弁護士の魅力を伝えると共に、各地での活動が更に活発かつ継続的になされるよう各地弁護団を経済面も含めて支援していく。

以上

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