意見表明

2023年 九州労働弁護団活動方針

2023年1月27日

第1 コロナ終息を見据えた労働事件への取組

次第に行動制限がない生活にも戻りつつあるが、新型コロナの労働環境への影 響は未だ無視できない状態が続いている。莫大な宅配を担う運転手の過酷な労働 環境や、安易な非正規労働者の雇用等、不安定な社会情勢のしわ寄せを労働者に 押し付けるかのような対応が見受けられる。新型コロナを寄貨として労働者が不 利益を負わされたり、労働環境を悪化させられることがないよう取組を行ってい く。

第2 解雇の金銭解消制度導入阻止に対する取組

「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」が報告書を まとめた。労働者側が反対しているにも関わらず、「労働者救済」を名目に導入に 向けての論点整理がなされている。労働者が労働契約解消金を求めるとしても、従 前通り解雇無効(地位確認)を争わなければならないことが前提となっており、労 働者の負担は何ら軽減されない。むしろ、解消金の水準が示されることで解決金の 低廉化や違法解雇の誘発を招く怖れがあり、到底「労働者救済」とは評価できない 制度である。引き続き、当該制度は労働者に不利益を与えるものであるとして、制 度導入に断固反対をしていく。

第3 均等均衡待遇への取組

「多様化する労働契約のルールに関する検討会」の報告書においては、不更新 条項の禁止等、無期転換前の雇止めに対する根本的な解決は示されなかった。ま た、無期転換後の労働条件についても、パート有期法8条類似の立法制度導入に は否定的であり、不十分な内容となっている。安易な非正規労働者の増加に歯止 めを掛けるため、労働契約法18条(無期転換ルール)及びパート有期法8条(均 等均衡待遇)を積極的に利用し、正規・非正規を問わず労働者相互の労働条件の是 正に向けて取組を行っていく。

第4 雇用によらない働き方に対する取組

東京都労働委員会は、ウーバーイーツの配達パートナーを労組法上の労働者と 認めるとともに、ウーバーに労組法上の使用者として団交応諾義務を認めた。今 後は上記労働命令を活用し、形式的には個人事業主として稼働する労働者であっ ても、労働組合法上の労働者に該当することを主張し、圧倒的に優位な交渉力・経 済力を持つプラットフォーマーに対して、団体交渉を求めるとともに、労働者の 権利保護が図られるよう必要に応じて法的手段など取り組んでいく。

第5 労働環境改善に向けての取組

  1. 教職員の給特法についての取組
    教職員給与特別措置法改正による影響を見定めながら、引き続き教職員の長時間労働防止に向けて、労働組合を支援していく。
  2. ハラスメントに対する取組
    2022年4月から全ての使用者に対して、パワハラ防止措置が義務化されたことによる影響を注視しつつ、働き方に関わらずすべての労働者がハラスメントのない労働環境で働けるよう取組を行っていく。
  3. 裁量労働制の拡大阻止に向けての取組
    「これからの労働時間制度に関する検討会」報告書では、裁量労働制が労使双 方にメリットがある等として積極的活用を肯定している。しかし、同報告書でも 認めるとおり、濫用的に利用されている実態があり、まずなされるべきは裁量労 働制濫用防止である。今後も要件を満たさない濫用的裁量労働制に対しては断固 とした対応をとることで、裁量労働制の安易な拡大を阻止していく。

第6 上記以外の九州の労働者が直面している問題に対する取組

  1. 最低賃金の大幅な引上げに向けた取組
  2. 女性労働者の権利擁護の取組
  3. 労災、アスベスト、原発労働問題

第7 信頼に応えられる弁護団へ

  1. 労働者・労働組合の権利闘争への取組の強化
    総会・夏季学習会において、弁護士のみならず、当事者や労働組合の参加を促進する。労働運動として取り組んでいる事件報告を充実させ、双方向での議論を推進する。全体で、情報共有・連携を促進し、労働者・労働組合の権利闘争に取 り組む。
  2. 情報発信への取組
    総会等の対面式開催を進めるとともに、引き続きリモート利用による参加者増加を目指す。様々な方法での会員間の情報共有を促進していく。
  3. 新入会員の拡大
    近年新入会員の減少傾向が続いていることから、昨年夏季学習会において実施 したような新入会員・若手会員向けの討論企画等を引き続き検討する。新入会員 等が労働事件に関心を持ち、九労弁にアクセス・加入しやすい環境を整える。
  4. 労働相談活動の充実
    各地のホットラインを利用し、積極的に労働者の相談に対応していく。
  5. 各地弁護団の活動支援
    労働弁護士の魅力やリアルな姿を伝えると共に、各地での活動が更に活発かつ継続的になされるよう各地弁護団を経済面も含めて支援していく。

以上

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